エネルギーは、供給されてから消費されるまでの間に、様々な段階を経ています。石油や石炭などのエネルギーが供給され、電気などに形を変える発電・転換部門を経由して、最終消費者に届けられます。このエネルギーが最終消費者に届くまでの間に発電や輸送中のロスが生じます。このロスを含めた全体の量を「一次エネルギー供給」と言い、一次エネルギー供給から、ロスを差し引いた、最終的に消費者に届けられるエネルギー量のことを「最終エネルギー消費」と言います。
- 一次エネルギー供給:石油、石炭、天然ガス、原子力、太陽光、風力など
- 最終エネルギー消費:電力、都市ガス、石油製品など
一次エネルギー | 消費先 |
石油 | ガソリン、軽油、重油 |
石炭 | 発電用燃料 |
天然ガス | 電力、都市ガス |
原子力、太陽光、風力 | 電力 |
エネルギーの消費と供給
高度経済成長期に、日本の最終エネルギー消費はGDPよりも高い伸び率で増加しました。しかし、オイルショックを機に省エネが推進され、エネルギー消費を抑えながら経済成長を果たすことに成功。その後、2005年をピークに最終エネルギー消費は減少傾向にあり、エネルギー効率は大きく改善しています。
海外と比較してみても日本のエネルギー利用効率は高く、2021年の実質GDP当たりのエネルギー消費はインドや中国の1/4から1/3程度となっています。これは、世界で最も省エネが進んでいる欧州の主要国と比較しても遜色のない水準です。
かつての日本のエネルギー供給の中心を担っていたのは石炭でしたが、その後石油が台頭。しかし、オイルショックの影響で石油依存から脱却するため、原子力や再エネの開発を進めました。その結果、エネルギーの多様化が図られました。
しかし、2011年に発生した東日本大震災によって原子力発電所が停止となったこともあり、化石エネルギーの消費量が増加。2021年における日本の化石エネルギー依存度は86.7%となっており、世界の主要国と比較しても高い水準となっています。
日本のエネルギー自給率は、国産石炭が主流だった1960年代は58.1%でしたが、石炭から石油へ燃料転換が進んだことにより、エネルギー自給率は大幅に低下しました。その後、原子力の導入によってエネルギー自給率は上昇したものの、原子力の発電量がゼロになった2024年度のエネルギー自給率は6.3%と、かなり低い水準です。
部門別エネルギー消費動向
日本におけるエネルギー消費の動向を「企業・事業所他部門」「家庭部門」「運輸部門」の3部門に分けて見てみると、最終エネルギー消費が最も多くのシェアを占めているのは「企業・事業所他部門」です。
「企業・事業所他部門」は、製造業・農林水産業・建設業・鉱業などの産業部門と第三次産業の業務他部門で構成されています。この「企業・事業所他部門」の中で、最も多くのシェアを占めているのは製造業です。かつての製造業のエネルギー消費は実質GDPを上回るほどでしたが、オイルショック後、省エネの推進や、素材産業から加工組立型産業へ構造がシフトしたことで、製造業全体のエネルギー消費効率は改善傾向にあります。
「家庭部門」の最終エネルギー消費は、家庭でのエネルギー消費が対象です。家庭部門のエネルギー消費量は、全体の15%ほどです。生活の便利性を求めた国民のライフスタイルの変化から、2005年にかけて大幅にエネルギー消費が増加しました。ですがその後、省エネ家電の普及や、国民の環境保護意識や省エネ意識の高まりから、家庭部門のエネルギー消費は減少傾向となっています。
「運輸部門」は、旅客部門と貨物部門に大別されます。エネルギー消費全体に占める運輸部門の割合は23.6%で、およそ1/4を占めています。旅客部門のエネルギー消費は、主に国民の自動車保有台数の増加に伴って増えましたが、ハイブリット自動車の普及や平均燃費の工場などにより、2002年度をピークに減少傾向です。貨物部門は1996年度をピークに減少傾向。貨物部門のエネルギー消費は、営業用や自家用のトラックなどの自動車による消費が約9割を占めています。
一次エネルギーの動向
化石エネルギーの動向
石油、石炭、天然ガスなどの化石エネルギーは、依然として世界の主要なエネルギー源です。特に発展途上国や産業分野では、これらのエネルギーが重要な役割を果たしています。しかし、化石エネルギーの使用は、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを大量に排出し、気候変動の主な原因とされています。このため、環境への影響が大きな懸念となっています。
石油
日本における石油の供給量は、石油代替エネルギーの拡大や自動車の燃費向上などにより、減少傾向です。日本の原油自給率は0.5%未満で、その多くを海外からの輸入に頼っています。2022年度の原油輸入に占める中東地域の割合は95.2%となっており、日本の中東依存度は、諸外国に比べても高い水準にあります。
日本では、原油のほとんどがガソリンなどの石油製品に転換され、国内で販売または海外へ輸出されています。
ガス
ガス体エネルギーには、油田の随伴ガスや単独のガス田から生産され、メタンを主成分とする「天然ガス」と、油田や天然ガス田の随伴ガス、石油精製設備等の副生ガスから取り出したプロパン・ブタンを主成分とする「LPガス(液化石油ガス)」があります。
「天然ガス」は、1969年に初めて輸入されたことをきっかけに利用が大きく進み、2022年度の一次エネルギー供給に占める天然ガスの割合は21.5%となっています。天然ガスの輸入割合は石油と同様に極めて高い97.9%。豪州やマレーシアからの輸入が多くなっています。
天然ガスは、54.3%が電力用、35.4%が都市ガス用として使われています。エネルギー源の多様化に向けた政策の一環として、天然ガスの利用が拡大しましたが、2014年度以降は再エネの普及拡大などにより、消費は減少傾向にあります。
「LPガス」の輸入比率は、1980年代以降現在に至るまで70〜80%の水準となっています。そのほとんどを米国からの輸入が占めています。LPガスの消費は、1996年度にピークを迎えた後、燃料転換などにより減少傾向に転じています。
石炭
2000年代以降、日本は石炭供給のほぼ全量を海外からの輸入に依存しています。国内での石炭生産は、1960年代の石油への転換で減少し、さらに1980年代以降の割安な輸入炭の影響によってさらに減少しました。
2022年度における日本の石炭消費は、電気業が最も多く、その次に鉄鋼業となっています。
非化石エネルギーの動向
非化石エネルギーには、「原子力」「再生可能エネルギー」があります。
原子力
原子力は、エネルギー資源の乏しい日本にとって、技術で獲得できる事実上の国産エネルギーとして、1954年以降、原子力発電所が相次いで建設されました。しかし、2011年に発生した東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故がきっかけとなり、各事業者が廃炉の判断を行い、運転を終了。2014年度には原子力発電所の稼働基数がゼロになったことにより、日本の発電電力量に占める原子力発電のシェアは0%となりました。その後は再稼働の進展に伴って上昇傾向となり、2022年度のシェアは5.5%となっています。
原子力利用に伴い発生した使用済み燃料については、国が前面に立って、最終処分に向けた取組が進められています。
再生可能エネルギー
再生可能エネルギーは、化石エネルギー以外のエネルギー源のうち、永続的に利用できるものを用いたエネルギーのことです。太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどが挙げられます。
世界のエネルギー需要が急増していることを背景に、従来通りの質・量の化石エネルギーを今後も安定的に確保し続けることが困難であること、気候変動対策を進めていく観点から、石油依存からの脱却を図るため、再生可能エネルギーの利用の促進が進められています。
太陽光
太陽光発電は、シリコン半導体等に光が当たると電気が発生する現象を利用し、太陽の光エネルギーを太陽電池によって電気に変換する発電方法です。日本では着実に導入量が伸びており、企業による技術開発や導入量の増加により設備コストも年々低下しています。日本の太陽光発電の累計導入量は、世界的に見ると中国と米国に次ぐ第3位です。
太陽光発電は、特に九州エリアにおいて、需要に対して大規模な導入が進んでいます。近年では、太陽光発電の出力ピーク時には、エリア内電力需要(1時間値)の8割以上を太陽光発電が占めることもあります。
なお、太陽光発電には天候や日照条件等によって出力が変動するという課題が残されています。太陽光発電の導入拡大のためには、コスト低減に向けた技術開発とともに、出力変動への対応を進めることが重要となっています。
風力発電
風力発電は、風の力で風車を回し、その回転運動を発電機に伝えることで、電気を起こす発電方法です。世界的に見ると、2022年末時点の日本の風力発電の導入量は、世界全体の1%未満。日本が諸外国よりも平地が少なく地形も複雑であること、電力系統に余裕がない場合があることなど、風力発電の設置が比較的進みにくいといった事情が影響しています。
こうした課題はありつつも、風力発電の導入を推進するため、電力会社の系統受入容量の拡大や、広域的な運用による調整力の確保等に向けた対策が行われています。
バイオマスエネルギー
バイオマスエネルギーとは、化石エネルギーを除く動植物に由来する有機物で、エネルギー源として利用可能なものを指します。特に植物由来のバイオマスは、その生育過程において大気中のCO2を吸収しているため、これらを燃焼させたとしても追加的なCO2が排出されないことから、カーボンニュートラルなエネルギーとされています。
日本で利用されているバイオマスエネルギーは、廃棄物の焼却によるものが主となっています。具体的には、製紙業等のパルプ化工程で排出される黒液や、製材工程から排出される木質廃材、農林・畜産業で排出される木くずや農作物の残りかす、家庭等から排出されるゴミ等を燃焼させることによって得られる電力・熱を利用するものなどがあります。
水力
水力発電は、高いところにある河川等の水を低いところに落とすことで、水の持つ位置エネルギーを利用して水車を回し、発電を行うものです。世界の水力発電設備容量における日本のシェアは、2022年末時点で3.6%となっています。
水力発電の新規開発は、開発地点の小規模化と奥地化が進んでいることから、発電コストが他の電源と比べて高くなる傾向にあり、新規開発の大きな阻害要因となっています。そこで、今後は農業用水等を活用した小水力発電のポテンシャルを活かしていくことが重要になってきます。小水力発電は、エネルギーの地産地消の推進にもつながるため、今後も開発が進むことが期待されています。
地熱
地熱発電は、地下深部に浸透した雨水等が地熱によって加熱され、高温の熱水として蓄えられている地熱貯留層から、熱水・蒸気を地上に取り出すことによってタービンを回し、電気を起こす発電方式です。CO2の排出量がほぼゼロであり、長期間にわたって安定的な発電が可能である地熱発電は、日本が世界第3位の資源量を有する電源として注目されています。一方で、地熱発電の導入には、地下の開発に係る高いリスクやコスト、地域の方々等からの理解、開発開始から発電所の稼働までに10年を超える長い期間を要すること等、様々な課題が存在しています。その課題を解決するため、様々な支援措置が講じられています。
エネルギーの高度利用
エネルギー効率の飛躍的な向上が図られる新規技術が、現在多く開発されています。
燃料電池自動車(FCV)、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)等の次世代自動車、水素と酸素を化学的に反応させて電気を発生させる燃料電池、冷媒を強制的に膨張・蒸発、圧縮・凝縮させながら循環させ、熱交換を行うことにより水や空気等の低温の物体から熱を吸収し、高温部へ汲み上げるヒートポンプ、熱と電気(又は動力)を同時に供給するコージェネレーション、再利用や再生利用がされない廃棄物を、廃棄物発電等の熱回収により有効利用したり、木質チップの製造等廃棄物から燃料を製造したりすることができる廃棄物エネルギー等、様々な技術の開発と利用の促進が進められています。
二次エネルギーの動向
二次エネルギーには、電力、ガス、熱供給、石油製品などがあります。
電力
日本では、オイルショックを契機に電源の多様化が図られてきました。2022年の電源構成は、シェアの大きい順に、天然ガスが33.8%、石炭が30.8%、新エネ等が14.1%、石油等が8.2%、水力が7.6%、原子力が5.5%となっています。
電力小売り事業は2016年度より全面自由化され、家庭や商店でも電力会社を自由に選べるようになりました。それに伴って小売事業者間の競争は活性化され、取引価格の安定化等が期待されています。
都市ガス
都市ガスの販売量は、2000年代後半にかけて右肩上がりに増加しました。それ以降の近年は、横ばいが続いています。
都市ガスの原料は、その主体を石炭系ガスから石油系ガスへ、そして石油系ガスから天然ガスへと変遷を遂げてきました。天然ガスは、一部の国産天然ガスを除き、その大部分を海外からのLNGとして調達してきました。原料に占める天然ガスの割合は年々高まり、1980年代には5割を超え、現在では9割以上を占めています。
電力に1年遅れる形で、2017年度から都市ガスの小売事業が全面自由化され、家庭や商店等においても、都市ガス会社を自由に選べるようになりました。
LPガス販売事業
LPガスは、全国の約半数の世帯で使用されているだけでなく、タクシー等の自動車用や工業用、化学原料用、都市ガス用、電力用等、幅広い用途に使われており、国民生活に密着したエネルギーです。LPガスには、プロパンガスとブタンガスの2種類があり、プロパンガスは主として家庭用や業務用、ブタンガスは主として産業用や自動車用に使用されています。
家庭用のLPガス料金は、販売事業者がそれぞれの計算方法によって料金を設定しています。家庭用LPガスの小売価格は、LPガスの輸入CIF価格の影響を受けながらも、全体的には上昇傾向が続いています。
熱供給
熱供給事業とは、1時間当たり21GJ以上の加熱能力を持つ設備を用いて、一般の需要に応じて熱供給を行う事業のことを指します。一般的には「地域冷暖房」と呼ばれており、一定地域の建物群に対し、蒸気・温水・冷水等を熱源プラントから導管を通じて供給します。
熱供給事業は供給地域内に設置された熱源プラントで熱供給を集約して効率的に行うため、省エネや環境負荷低減といった効果が得られます。大きなCO2削減効果があるとして期待されています。
石油製品
日本の石油製品(ガソリンや灯油等の燃料油)の販売量は、1970年代にかけて増加しましたが、オイルショックを契機に、石油代替と利用効率の向上を進めたことで減少に転じました。その後、2000年代半ば以降から現在に至るまで、減少傾向が続いています。その一方で、石油精製各社は、燃料供給の多様性を維持する企業努力として、余剰設備の有効利用を図り、設備稼働率の低下による製造コスト上昇を回避すべく、石油製品の輸出を行っています。2022年度の燃料油の輸出先については、海外を往復する航空機や船舶向けの割合が35%を占めていますが、国別に見ると、韓国、豪州、シンガポール等、アジア・オセアニア向けが上位を占めています。
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