東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故から今年で13年が経過しました。この出来事は、日本のエネルギー政策の大きな転換点となり、様々な課題点が浮き彫りとなりました。本記事では、福島復興に向けた取組や現状行われている支援、今後の構想などを紹介します。

東京電力福島第一原子力発電所事故への取組

現在、国は東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に関して、前面に立って現場状況の把握や廃炉に向けての研究開発を踏まえた上で、必要な対応を着実に進めています。廃炉・汚染水・処理水対策については、2019年に改訂された「東京 電力ホールディングス(株)福島第一原子力発電所廃止措置等 に向けた中長期ロードマップ」に基づき、継続的に検証を加えつつ進められています。

原子炉建屋内には、原子力発電所事故により溶けて固まった燃料である「燃料デブリ」が残っており、水をかけて冷却を 続けることで、低温での安定状態を維持しています。この燃料デブリに触れた水が、高い濃度の放射性物質を含んだ「汚染水」です。この水が、建屋に流入した地下水と混ざり合うことで、新たな汚染水が発生することも問題となっており、2013年9 月には、原子力災害対策本部において「汚染水問題に関する基本方針」が決定されました。

【汚染水対策の3つの基本方針】
①汚染源に水を「近づけない」②汚染水を「漏らさない」③汚染源を「取り除く」

汚染水からトリチウム以外の放射性物質を安全基準を満たすまで浄化した水である「ALP処理水」については、2021年に海洋放出する方針が公表され、2023年8月に海洋放出が開始されました。2023年度中に計4回の海洋放出が実施されましたが、計画通り安全に放出されていることがモニタリングの結果からも確認されています。

東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業は長期に渡るため、これらを円滑に進めるためには作業に従事するあらゆる方々が 安心して働くことができる環境を整備することが重要となっています。そのため、東京電力は、除染・フェーシング作業による環境線量低減対策を行うことや、ヘリポートを設置して搬送時間を短縮することで緊急時の医療体制を強化すること、食堂・売店・シャワー室を備えた大型休憩所を設置するなど、発電所内の労働環境改善に継続的に取り組んでいます。

原子力被災者への支援

放射線の濃度の関係で帰宅困難区域に指定されている区域のうち、避難指示を解除して居住を可能とするものとして定められる区域である「特定復興再生拠点区域」については、2023年11月までに全ての自治体で避難指示が解除されました。また、特定復興再生拠点区域外についても、段階的な避難指示の解除に向けての取り組みが行われています。

政府では、2016年12月に閣議決定された「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針」において、次のような総合的・重層的な防護対策を行うこととしています。

  • 住民の方々の放射線不安に対するきめ細かな対応
  • 避難生活の長期化等や放射線による健康不安への適切な対応
  • 関係省庁におけるリスクコミュニケーションの取組の強化
  • 生活支援相談員について、帰還後も支援を継続できるよ う支援対象の明確化や関係省庁との連携促進

原子力災害の被災事業者のための自立支援策、風評被害対策

避難指示が解除された地域で生活を再開するためには、働く場所、 買い物をする場所、医療・介護施設、行政サービス機能等の、まちとして備えるべき機能が整備されている必要があります。

2015年8月に、国、福島県、民間からなる福島相双復興官民合同チー ムが創設されました。国、県、民間が一体となって腰を据えた支援を行うため体制強化を図りつつ、事業再建計画の策定支援、支援策の紹介、生活再建への支援を実施する等、様々な取り組みがなされています。

福島新エネルギー社会構想

東日本大震災後、福島県は、再生可能エネルギーの推進を復興の柱の1 つとし、再エネ発電設備の導入拡大、関連産業の集積、実証事業・技術開発等の取組を進めています。原子力に依存しない社会づくりの実現に向けて、2040年頃を目途に福島県内の一次エネルギー需要量の100%以上に相当する量のエネ ルギーを再エネから生み出すという目標を掲げています。

国においても、他の地域にはない補助制度を福島県に向けて措置し、「再生可能エネル ギー先駆けの地」を目指す福島の再エネ設備の導入を後押ししています。その取り組みの結果、震災後の10年間で、太陽光を中心に県内の再エネの設備容量は8倍以上に増加しました。今後は、大規模な風力発電等が計画されている等、再エネの導入が拡大しています。

利用時にCO2を排出しないクリーンエネルギーである水素エネルギーも、利活用が期待されているもののひとつです。2020年3月には、浪江町において福島水素エネルギー研究フィールドが開所され、再エネから水素を製造する実証プロジェクトが実施されています。

原子力損害賠償

政府は、2011年3月11日の東京電力福島第一、第二原子力発電所事故に関して、原子力損害賠償を円滑に進められるよう、「原子力損害賠償紛争審査会」を設置しました。なお、この審査会の指針で示された損害額の目安が賠償の上限となるのではなく、個別具体的な状況に応じて相当因果関係のある損害と認められるものについては全て賠償の対象となるとされています。さらに、東京電力に対しては、被害者からの賠償請求を真摯に受け止め、審査会の指針が示す損害額はあくまでも目安であり、賠償の上限ではないことに改めて留意する等、合理的かつ柔軟な対応と同時に、被害者の心情にも配慮した誠実な対応を求めています。

この審査会の指針等を踏まえて、東京電力は、政府による避難等の指示等によって避難を余儀なくされたことによる精神的損害に対する賠償、財物価値の毀損に対する賠償、営業損 害に対する賠償等を実施し、2024年3月末時点で、 総額約11兆2,560億円の支払が行われています。

また、原子力損害賠償紛争解決センターでは、東京電力福島第一、第二原子力発電所事故により被害を受けた方々の原子力事業者(東京電力)に対する損害賠償請求に関して、円滑、迅速かつ公正に紛争を解決することを目的に業務が行われています。例えば、事故の被害を受けた方からの申立てにより、仲介委員が当事者双方から事情を聴き取って損害の調査・検討を行い、双方の意見を調整しながら和解案を提示、和解の仲介業務を実施する等です。

政府は、2011年6月に「東京電力福島原子力発電所事故に係る原子力損害の賠償に関する政府の支援の枠組みについて」を閣議決定し、下記3点を目的とすることで「国民負担の極小化」を図るため、損害賠償に関する支援を行うための万全の措置を行うことが確認され、その後も様々な取り組みがなされています。

①被害者への迅速かつ適切な損害賠償のための万全の措置②東京電力福島原子力発電所の状態の安定化・事故処理に関係する事業者等への悪影響の回避③電力の安定供給

東京電力福島第一原子力発電所の事故における課題を再生可能エネルギーで

東京電力福島第一原子力発電所の事故における課題は未だ多く残っています。政府は、それらをひとつひとつ着実に、誠実に、段階的に解決できるよう、様々な取り組みを行っています。

今後の福島の目指す未来となっている「再生可能エネル ギー先駆けの地」としての取組にあるよう、再生可能エネルギー業界は今大きく注目されている業界です。そんな再生可能エネルギー業界の事業者であるリニューアブルジャパン社では、共に働く仲間を募集中です。気になる方は求人をご確認ください。