2050年のカーボンニュートラル実現に向け、化石燃料の利用に伴うCO2排出を大幅に削減するための技術的な選択肢を模索する必要があります。その一つが、CO2の分離・回収・再利用を可能にするカーボンリサイクル技術です。ここでは、カーボンリサイクルの意義や目標、課題、そして取り組むべきアクションについて概説します。

カーボンリサイクルの意義

カーボンリサイクルは、産業活動から排出されるCO2を低減し、残余のCO2を効果的に管理することで、脱炭素化に向けた重要な取り組みです。具体的には、CO2を炭素資源と捉え、再利用することで、製品のサプライチェーン全体で従来よりも低いCO2排出を実現します。2050年時点での最大CO2リサイクル量は約2億〜1億トンと推測されており、これがカーボンニュートラル社会の実現に貢献します。

カーボンリサイクルの技術開発と社会実装

2050年までにカーボンニュートラルを達成するために、具体的な技術開発や実装が必要です。2030年までには、合成燃料の商用化などを含む技術開発を進め、早期の技術確立とコスト低減、普及を目指します。また、事業化を見据えた際には、環境価値やコストの社会的な受容が重要です。そのため、水素や分離回収技術のコストなどを考慮した事業化支援策が必要です。

産業間連携の重要性

CO2の排出者と利用者の間での産業間連携が重要です。これには、大規模産業集積型、中小規模分散型、オンサイト型などの異なるモデルがあります。連携の効率的な実現のためには、利用者間のマッチングやトレーサビリティが重要です。中小規模分散型におけるCO2輸送や連携のあり方の検討、そしてマネジメント事業者の役割やシステム構築の検討が求められます。

環境価値評価と国際展開

国際展開においては、CO2やエネルギーのサプライチェーンの最適配置や関連市場の創造が重要です。また、CO2排出抑制効果の適切な評価や海外企業との連携も必要です。このために、同志国や海外企業との連携を強化し、国境を超えたカーボンリサイクルの環境価値を適切に配分する仕組みの整備が必要です。

担い手の育成とエコシステムの確立

カーボンリサイクルの技術や取り組みに携わる担い手の育成やエコシステムの確立が重要です。研究機関の増加とともに、スタートアップ企業の育成が求められます。これらの技術の萌芽を育て、カーボンリサイクルの普及に向けたエコシステムの構築を進めるために、産学官一体の支援策が必要です。

カーボンリサイクルは、CO2を未来の資源として捉え、大気中に放出されるCO2の削減や新たな資源の確保に貢献します。技術開発や産業間連携、国際展開など、様々なレベルでの取り組みが必要ですが、これにより持続可能な未来を築くための重要な一歩となります。

参考:経済産業庁 https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/carbon_recycle_rm/pdf/20230623_02.pdf