電気主任技術者とは?
電気主任技術者は、発電所や変電所、工場やビルなどに設置されている受電設備や配線などの電気設備の保守・監督を行うために必要な国家資格です。電気設備を設けている事業主は、その工事、保守、運用などの保安監督者として、電気主任技術者を選任しなければならないことが電気事業法で定められています。
現在では、ほとんどの機械や設備は電気で動作し、電子機器で制御されているため、電気主任技術者はインフラを支えるためになくてはならない資格です。
国家試験が「電気主任技術者試験」と称されることから、最初と最後の文字を取って「電験」と略すこともあります。
電気主任技術者は3つに分類される
電気主任技術者は、取り扱うことのできる電気工作物の電圧に応じて、第一種、第二種、第三種に分かれています。
第一種 | すべての事業用電気工作物 |
第二種 | 電圧が17万ボルト未満の事業用電気工作物 |
第三種 | 電圧が5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5千キロワット以上の発電所を除く) |
第三種電気主任技術者(電験三種)の難易度、合格率、試験概要
電気主任技術者の資格の中でも入門として位置づけられる第三種。その難易度、合格率、試験概要はどのようなものか見ていきましょう。
第三種電気主任技術者(電験三種)の難易度
第三種電気主任技術者(電験三種)の合格率は、例年10%前後。他の国家資格と比較しても難易度は高めであると考えられます。
ですが、受験資格の制限がないため、異業種からチャレンジすることも可能です。
第三種電気主任技術者(電験三種)の合格率
年度 | 合格率 |
令和5年度上期 | 16.6% |
令和4年度下期 | 15.7% |
令和4年度上期 | 8.3% |
(出典:令和 5 年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について)
第三種電気主任技術者(電験三種)の試験概要
第三種電気主任技術者試験には「理論」「電力」「機械」「法規」の4科目があり、それぞれに合否判定が行われます。この4科目すべてに合格すれば、第三種電気主任技術者試験に合格となります。各科目の解答方式は、マークシートに記入(筆記方式)又はパソコンで解答(CBT方式)する五肢択一方式です。
科目 | 出題範囲 | 試験時間 |
理論 | 電気理論、電子理論、電気計測及び電子計測 | 90分 |
電力 | 発電所、蓄電所及び変電所の設計及び運転、送電線路及び配電線路(屋内配線を含む。)の設計及び運用並びに電気材料 | 90分 |
機械 | 電気機器、パワーエレクトロニクス、電動機応用、照明、電熱、電気化学、電気加工、自動制御、メカトロニクス並びに電力システムに関する情報伝送及び処理 | 90分 |
法規 | 電気法規(保安に関するものに限る。)及び電気施設管理 | 65分 |
一部の科目だけ合格した場合は「科目合格」となり、最初に合格した試験以降、申請により最大で連続して5回まで当該科目の試験が免除されます。
第二種電気主任技術者(電験二種)
第三種電気主任技術者に合格した受験者が、次に受験するのが第二種電気主任技術者。五肢択一の科目試験のみだった第三種とは違い、多肢選択方式の一次試験、記述方式の二次試験に分かれます。その難易度、合格率、試験概要はどのようなものか見ていきましょう。
第二種電気主任技術者(電験二種)の難易度
第二種電気主任技術者(電験二種)の合格率は例年20%前後。決して高くはない合格率なので、比較的難しいとも言えるでしょう。
ですが、一次試験の内容は科目によっては、第三種電気主任技術者の範囲でカバーできるところもあるため、既に第三種電気主任技術者程度の知識があれば、合格の可能性は高まります。
第二種電気主任技術者(電験二種)の合格率
年度 | 合格率 |
令和5年度 | 17.7% |
令和4年度 | 24.0% |
令和3年度 | 17.2% |
(出典:令和5年度第一種及び第二種電気主任技術者二次試験の結果について)
第二種電気主任技術者(電験二種)の試験概要
第二種電気主任技術者試験は、一次試験と二次試験に分かれます。一次試験に合格しなければ、二次試験を受けることは出来ません。
一次試験
一次試験は「理論」「電力」「機械」「法規」の4科目。各科目の解答方式は、マークシートに記入する多肢選択方式です。
科目 | 出題範囲 | 試験時間 |
理論 | 電気理論、電子理論、電気計測及び電子計測 | 90分 |
電力 | 発電所、蓄電所及び変電所の設計及び運転、送電線路及び配電線路(屋内配線を含む。)の設計及び運用並びに電気材料 | 90分 |
機械 | 電気機器、パワーエレクトロニクス、電動機応用、照明、電熱、電気化学、電気加工、自動制御、メカトロニクス並びに電力システムに関する情報伝送及び処理 | 90分 |
法規 | 電気法規(保安に関するものに限る。)及び電気施設管理 | 65分 |
一部の科目だけ合格した場合は「科目合格」となり、翌年と翌々年の試験では申請によりその科目は免除されます。3年のうちにすべての科目に合格すれば一次試験合格となり、二次試験の受験資格を得ることができます。
二次試験
二次試験は「電力・管理」「機械・制御」の2科目。各科目の解答方式は、記述方式です。
科目 | 出題範囲 | 試験時間 |
電力・管理 | 発電所、蓄電所及び変電所の設計及び運転、送電線路及び配電線路(屋内配線を含む。)の設計及び運用並びに電気施設管理 | 120分 |
機械・制御 | 電気機器、パワーエレクトロニクス、自動制御及びメカトロニクス | 60分 |
なお、二次試験には科目別合格の制度はありませんが、一次試験に合格した年度の二次試験に不合格となった場合は、翌年度の一次試験が免除されます。
第一種電気主任技術者(電験一種)
電気主任技術者の資格の中で最も難しいとされる第一種。
その難易度、合格率、試験概要はどのようなものか見ていきましょう。
第一種電気主任技術者(電験一種)の難易度
第一種電気主任技術者の合格率は、10%以下の年度もあれば、20%を超えることもあります。年度によって難易度に差はあります。
高度な知識や技術を身に着けることが不可欠のため、難易度は非常に高いです。電力関連の資格の中では最難関であると考えられます。
第一種電気主任技術者(電験一種)の合格率
年度 | 合格率 |
令和5年度 | 17.9% |
令和4年度 | 20.9% |
令和3年度 | 8.0% |
(出典:令和5年度第一種及び第二種電気主任技術者二次試験の結果について)
第一種電気主任技術者(電験一種)の試験概要
第一種電気主任技術者試験も、第二種電気主任技術者試験と同様に、一次試験と二次試験に分かれます。一次試験に合格しなければ、二次試験を受けることは出来ません。
一次試験
一次試験は「理論」「電力」「機械」「法規」の4科目。各科目の解答方式は、マークシートに記入する多肢選択方式です。
科目 | 出題範囲 | 試験時間 |
理論 | 電気理論、電子理論、電気計測及び電子計測 | 90分 |
電力 | 発電所、蓄電所及び変電所の設計及び運転、送電線路及び配電線路(屋内配線を含む。)の設計及び運用並びに電気材料 | 90分 |
機械 | 電気機器、パワーエレクトロニクス、電動機応用、照明、電熱、電気化学、電気加工、自動制御、メカトロニクス並びに電力システムに関する情報伝送及び処理 | 90分 |
法規 | 電気法規(保安に関するものに限る。)及び電気施設管理 | 65分 |
一部の科目だけ合格した場合は「科目合格」となり、翌年と翌々年の試験では申請によりその科目は免除されます。3年のうちにすべての科目に合格すれば一次試験合格となり、二次試験の受験資格を得ることができます。
二次試験
二次試験は「電力・管理」「機械・制御」の2科目。各科目の解答方式は、記述方式です。
科目 | 出題範囲 | 試験時間 |
電力・管理 | 発電所、蓄電所及び変電所の設計及び運転、送電線路及び配電線路(屋内配線を含む。)の設計及び運用並びに電気施設管理 | 120分 |
機械・制御 | 電気機器、パワーエレクトロニクス、自動制御及びメカトロニクス | 60分 |
なお、二次試験には科目別合格の制度はありませんが、一次試験に合格した年度の二次試験に不合格となった場合は、翌年度の一次試験が免除されます。
電気主任技術者試験の資格を取るメリット
電気主任技術者の資格はどれも難易度の高い試験ではありますが、取得すれば「電気のスペシャリスト」として、多数のメリットがあります。
メリット①需要が高い
電気主任技術者の資格を有していると、電気事業法で定められた独占業務に従事することができます。独占業務とは、その資格を持っていないと携わることのできない業務のことを言います。電気事業がなくてはならない現代において、電気主任技術者のニーズはかなり高く、将来的にも需要が見込まれます。
メリット②将来人手不足になる可能性が高いため、長く働くことができる
経済産業省の資料「電気保安人材の持続可能な確保・活用に向けた制度のあり方について」によれば、電気主任技術者の有資格者は、2030年には約2,000人が不足するという推計結果が出ています。
今後、どの業界においても必要とされる資格である電気主任技術者。今から資格を取得し、実務経験を積むことで、安定して長く働くことが可能になります。また、その高い専門性と技術知識を活かして独立することも可能です。
メリット③転職に有利
有資格者の高齢化に伴う退職などの影響から、各企業は電気主任技術者の資格保有者の人材確保に力を入れています。そのため、電気主任技術者の資格を持っていれば「電気のスペシャリスト」としてのアピールが可能。また、資格保有者がいなければ企業が独占業務を遂行することができないため、有効求人倍率に関わらず採用求人は多い傾向です。
電気主任技術者の求人
電気主任技術者は、全国各地で求められています。自らの望む勤務地で働けることもメリットのひとつとも言えるでしょう。また、今は資格を持っていなくても、今後資格取得予定で応募可能な求人もあります。
まずは実際の求人を見て、イメージを膨らませてみてはいかがでしょうか。