「電気主任技術者はやめとけ」と言われる理由は?
発電所や変電所、工場やビルなどに設置されている受電設備や配線などの電気設備の保守・監督を行う電気主任技術者。
ほとんどの機械や設備が電気で動作し、電子機器で制御されている現代において、電気主任技術者はインフラを支えるためになくてはならない職業です。
ですが、電気主任技術者の労働環境や責任の重さから「やめとけ」と言われることも。
この記事では、「電気主任技術者はやめとけ」と言われる理由や、どんな人が向いているのかを解説します。
理由①資格取得の難易度が高い
電気主任技術者になるには、電気主任技術者試験に合格しなければなりません。国家資格のこの試験の難易度は非常に高く、特に第一種電気主任技術者に関しては「電力関連の資格の中で最難関」とも言われています。
令和5年度の合格率は、下記の通り。
合格率 | |
第三種電気主任技術者 | 16.6% |
第二種電気主任技術者 | 17.7% |
第一種電気主任技術者 | 17.9% |
(出典:『令和 5 年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について』『令和5年度第一種及び第二種電気主任技術者二次試験の結果について』)
どれも20%を下回る合格率であることからも、難易度の高さがうかがえます。
この資格取得の難しさが、電気主任技術者は大変だというイメージに繋がっていると言えるでしょう。
理由②人手不足でブラックな環境
業界の中でも、電気主任技術者の不足は深刻な問題となっています。
人手不足にある背景は、電気主任技術者の資格取得者が減少していることと、資格取得者の高齢化が考えられます。
経済産業省の資料「電気主任技術者制度について」によれば、2030年の時点で第二種電気主任技術者は約1,000人の不足、第三種電気主任技術者は約800人の不足となる可能性があります。
人手不足が進むと既存社員に業務が集中し、1人あたりの業務量が増加することによって、長時間労働となる可能性が懸念されます。
理由③労働時間が不規則
電気主任技術者の主な業務は、電気設備の保守・点検です。
対象となる電気設備は昼夜問わず稼働しているものもあるため、夜間にトラブルが発生することがあります。電気設備に何かしらの異常が発生した場合は、駆け付ける必要があるため、休日や深夜に呼び出しを受ける可能性もあります。
理由④転勤が多い
電気主任技術者は、会社にもよりますが、全国転勤の可能性があります。
特に、対象となる電気設備が広域にあるような会社だと、転勤となる可能性が高いです。
ですが、会社によっては転勤のない働き方ができるところもあるので、転勤を希望しない方は求人応募の際に注意して見ておくべきでしょう。
理由⑤業務に対する責任が重い
電気主任技術者の主な業務である、電気設備の保守・点検は、安全のための重要な立場を担います。そのため、事故が発生すると、原因によっては電気主任技術者が責任を負うこともあります。
場合によっては命に係わるリスクも伴う電気設備の保安業務は、責任が重すぎると考える人もいるでしょう。
理由⑥電気関連以外の仕事も多い
電気主任技術者の業務には、電気に関係のないものも含まれます。
日程調整、書類作成、設備周辺の清掃など、専門外の雑務も少なくありません。
「専門性の高い職に就いたのに、思ったように知識や技術を活かせない」とならないよう、事前に求人票を確認することや、現場で働く電気主任技術者に話を聞くなどして、事前に業務の内容を把握しておく必要があります。
理由⑦知識と技術のアップデートが必要
業界内の技術は日々進化していきます。最近では、再生可能エネルギー設備の導入や、環境問題、エネルギーの効率化の観点など、新たに出てきたトピックスに対応できるだけの知識と技術を、常に最新のものにアップデートし続ける必要があります。
常に学ぶ姿勢が必要だということは、自らの専門性を古いものにしないというメリットはありますが、アップデートのために時間を投資する必要があることから、マイナス面だと捉える人もいると考えられます。
電気主任技術者として従事するメリットは?
メリット①将来性がある
経済産業省の資料「電気保安人材の持続可能な確保・活用に向けた制度のあり方について」によれば、電気主任技術者の有資格者は、2030年には約2,000人が不足するという推計結果が出ています。
どの業界においても必要とされる電気主任技術者。社会的ニーズの高い職種のため、今後も安定して継続的に働き続けることができます。
メリット②需要が高いので転職しやすい
電気主任技術者は高齢化に伴う離職の観点から、その不足が懸念されています。電気主任技術者は独占業務のため、資格取得者がいなければ企業はその業務を遂行することができません。そのため、電気主任技術者の資格を持っているというだけで、転職市場ではかなりのアドバンテージとなります。
メリット③高年収が期待できる
電気主任技術者の資格を持っているだけで、資格手当を受けることのできる会社があります。
厚生労働省の発表した「令和4年賃金構造基本統計調査」の結果によると、電気工事士の平均年収は506.8万円。電気主任技術者は、電気工事士を監督する立場でもあるため、電気工事士よりも年収が高いことが期待できます。
また、実務経験を積んだのちに独立した場合、年収が1000万円を超えることも可能であると言われています。日本における民間の平均年収が458万円(出典:国税庁『令和4年分 民間給与実態統計調査』)であることから、その倍以上稼ぐことが期待できる電気主任技術者は、高年収と言えるでしょう。
電気主任技術者に向いているのはどんな人?
責任感のある人
電気主任技術者は、電気設備の安全のための重要な立場を担う人材です。日々の業務が安全に繋がり、人々の生活を守っているという責任感を持って業務に取り組むことのできる人が向いていると言えるでしょう。
コツコツ頑張ることのできる人
電気主任技術者の主な業務は、電気設備の保守・点検です。
毎日の点検作業は同じでつまらないと感じる人もいるかもしれませんが、何も異常がない状態であることは良いことです。異常がない状態が続くということは、電気主任技術者の責務が果たされているということ。縁の下の力持ちとして、毎日の同じ作業でもコツコツと取り組むことのできる人が向いていると言えるでしょう。
コミュニケーション能力のある人
電気主任技術者は監督の役割を担うため、他の関係者に注意をすることや指示を出す場面もあります。あらゆる関係者と意見のやり取りを図る必要があるため、コミュニケーション能力のある人に向いています。
自身のキャリアにとって最善の選択をするには?
自身のキャリアのゴールがどこにあるのかを把握する
自身のキャリアのゴールがどこにあるのかを把握することは大切です。自分の目指すキャリアパスはどのようなものなのか。そのキャリアパスに、電気主任技術者はどの程度寄与するものなのか。自身の将来像を明確にすることで、どの選択をすべきかが見えてくることでしょう。
メリットとデメリットを比較する
電気主任技術者には、この記事でも述べたようにメリットとデメリットが存在します。そのどちらも把握した上で、自らがどのような判断をするのかが大切です。
希望の優先順位を決める
先に述べたメリットとデメリットを比較して判断する際、自身の中での希望の優先順位を決めておく必要があります。年収、勤務地、業務内容、やりがいなど、自身の中での譲れないポイントはどこなのかを明確にしておくことで、判断がしやすくなります。
実際の求人を見てイメージをする
実際の求人を見て「この業務を、自身はこなすことができるのか」という観点からイメージを膨らませてみることも大切です。働くイメージができる求人は、自身にとって解像度の高いものなので、経験や知識を活かすことのできる可能性が高いです。
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