再生可能エネルギーの普及促進政策として、FIT(Feed-In Tariff)とFIP(Feed-In Premium)があります。これらの政策は、再生可能エネルギーの導入を奨励し、持続可能な社会の実現に向けた取り組みの一環として注目されています。以下では、FITとFIPの定義や内容、違い、およびそれぞれのメリット・デメリットについて比較してみましょう。
FIT(Feed-In Tariff)とは?
FITは、再生可能エネルギー発電事業者に対して、固定価格で電力を買い取る制度です。具体的には、再生可能エネルギーの発電設備を所有する事業者が電力を供給する際に、国が定めた一定の価格で電力を買い取ることを義務付ける制度です。
この価格は、再生可能エネルギーの特定の技術や規模に基づいて政府が設定します。主な再生可能エネルギー技術としては、太陽光発電、風力発電、水力発電などが挙げられます。
FITのメリット
- 再生可能エネルギーの導入を促進し、持続可能なエネルギー供給を実現する。
- 発電事業者にとって、安定した収益を確保できる。
FITのデメリット
- FIT価格の設定が難しく、適切な価格を見極める必要がある。
- FIT制度による買取価格の上昇が電力料金に影響を与える可能性がある。
FIP(Feed-In Premium)
FIPは、FITとは異なり、再生可能エネルギーの発電事業者に対してプレミアム(追加料金)を支払う制度です。具体的には、市場価格よりも高い価格で再生可能エネルギーの電力を買い取ることを義務付けます。
これにより、再生可能エネルギーの導入を促進し、発電事業者に対して市場価格以上の収益を提供します。FIPは、FITと同様に再生可能エネルギーの普及促進に寄与しますが、買取価格が市場価格よりも高いため、FITよりもコストがかかる傾向があります。
FIPのメリット
- 発電事業者にとって、市場価格よりも高い価格で電力を買い取ることができる。
- FITよりも柔軟な価格設定が可能であり、市場の変動に対応しやすい。
FIPのデメリット
- 高い買取価格が電力料金に影響を与え、消費者に負担を与える可能性がある。
- FITと比較して、価格の変動リスクが高い。
制度を取り巻く4つのキーワード
基準価格
FIP制度における基準価格は、FIT制度の固定価格のことです。
FIP制度は電力市場への統合を促しつつ、事業者の投資インセンティブを確保するものです。よってFIT価格と同じく、再生可能エネルギー電気の供給のために通常必要な費用と事業者の利益を基本として算出します。
FIP制度開始以降、しばらくはFIT価格と同水準にすることが定められています。
プレミアムが交付される20年間は固定となります。
参照価格
参照価格は、市場取引などによって事業者が期待できる収入を指します。参照価格は、市場価格をもとにして次の計算方式で算出できます。
参照価格=市場価格+非化石価値市場の価格-バランシングコスト
プレミアム
基準価格と参照価格の差=プレミアムです。
FIP制度では、事業者は参照価格にプレミアムを加算された価格を収益として得ることができ、プレミアムは以下の計算式で求めることができます。
プレミアム=基準価格-参照価格
基準価格が20年間固定なのに比べて、参照価格は市場価格に連動して毎月変動します。毎月の変動はプレミアムも同じで、プレミアムも毎月変動します。
電力市場の価格が高騰し、参照価格が基準価格を超える場合は、プレミアムは0円となります。
バランシングコスト
インバランスとは発電計画や需要計画と実績値とのズレのことであり、電力会社(一般送配電事業者)は事前に確保した供給力で、不足インバランスや余剰インバランスがゼロになるように調整をしています。需要計画と実績値のズレは、太陽光発電や風力発電を行っている事業者にはかなりの負担となるといえます。太陽光・風力は自然変動が大きく、事前の予測が難しいことが理由です。
このインバランスのリスクを軽減させるための経過措置として、変動電力である太陽光・風力については一定の額を交付することになっています。これをバランシングコストといいます。2022年度は1kWh当たり1.0円が交付され、今後順次縮小されていく見込みです。
FITとFIPは、再生可能エネルギーの普及促進に向けた政策として重要な役割を果たしています。それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解し、適切に活用することが、持続可能なエネルギー社会の実現に向けた重要な一歩となるでしょう。
参考:資源エネルギー庁『再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート』