固定価格買取制度(FIT)の見直しは、エネルギー政策の重要な一環であり、再生可能エネルギーの持続可能な導入と国民負担の抑制を両立させるために、様々な施策が検討され、実施されています。今回はそのポイントをまとめてみました。

参考:経済産業省 固定価格買取制度(FIT)見直しのポイント https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/kihon_seisaku/saisei_kano/pdf/009_s01_00.pdf

固定価格買取制度(FIT)の見直しは、再生可能エネルギーの最大限の導入と国民負担の抑制の両立

固定価格買取制度(FIT)の見直しは、再生可能エネルギーの最大限の導入と国民負担の抑制の両立を目指しています。具体的なポイントとしては、再生可能エネルギーの導入におけるエネルギーミックスの考慮が挙げられます。

FIT認定量の約9割が事業用太陽光に偏っている

現状では、FIT認定量の約9割が事業用太陽光に偏っており、他の再生可能エネルギーの導入が遅れています。そのため、電源間でのバランスの取れた導入を促進し、エネルギーミックスの多様性を確保することが重要です。FIT制度の買取費用が約2.3兆円に到達する見通しであるため、コスト効率的な導入を促進する必要があります。

2030年には、エネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの導入水準が22-24%に達する見通し

2030年には、エネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの導入水準が22-24%に達する見通しであり、この目標を達成するためにもFIT制度の見直しが不可欠です。さらに、電力システム改革の成果を活かし、効率的な電力の取引・流通を実現することも重要です。過去に九州電力などで接続保留問題が発生したように、電力の取引や流通に関する問題を解決し、スムーズな運用を実現することが求められています。

見直しのポイントは以下の通りです。

  • 未稼働案件の発生を踏まえた新認定制度の創設
    • 発電事業の実施可能性を確認した上で認定する新たな制度を創設する。これには、例えば系統への接続契約締結を要件化することが含まれる(第9条)。
    • 既存の認定案件は、原則として新制度での認定の取得を求める。ただし、発電開始済等の案件については経過措置を設ける(附則第4条~第7条)。
  • 適切な事業実施を確保する仕組みの導入
    • 新制度では、事業開始前の審査に加え、事業実施中の点検・保守や、事業終了後の設備撤去等の遵守を求める(第9条・第13条・第15条)。
    • 景観や安全上のトラブルが発生している状況に鑑み、事業者の認定情報を公表する仕組みを設ける(第9条)。
  • コスト効率的な導入
    • 中長期的な買取価格の目標を設定し、予見可能性を高める(第3条)。
    • 事業者間の競争を通じた買取価格低減を実現するため入札制を導入(第4条~第8条)。この入札制は、事業用太陽光を対象とし、大規模案件から実施される。
    • 数年先の認定案件の買取価格まで予め提示することを可能とする(第3条)。住宅用太陽光や風力などでは、価格低減のスケジュールが示される。
    • 賦課金8割減免は、電力多消費事業の省エネの取組の確認や国際競争力強化の制度趣旨の徹底、省エネの取組状況等に応じた減免率の設定を可能とする(第37条)。
  • 地熱等のリードタイムの長い電源の導入拡大
    • 数年先の認定案件の買取価格まで予め提示することを可能とする(第3条)。これにより、地熱・風力・中小水力・バイオマスなどのリードタイムの長い電源について、発電事業者の参入を促進します。
  • 電力システム改革を活かした導入拡大
    • 再生可能エネルギー電気の買取義務者を小売電気事業者等から一般送配電事業者等に変更する(第16条)。これにより、電力の広域融通がより円滑化され、より多くの再生可能エネルギーの導入が可能となります。
    • 市場経由以外にも、小売電気事業者等への直接引渡しも可能とする(第17条)。

※1 「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関す る特別措置法等の一部を改正する法律」 (平成28年5月25日成立・6月3日公布・平成29年4月1日施行)

※2電気事業法においてもFIT法での送配電事業者への買取義 務導入に対応し行為規制等の所要の改正を行う。

※3現行法附則第10条(少なくとも3年毎の見直し)に基づき、 見直しを行ったもの。引き続き、エネルギーミックス実 現の観点から定期的に検討する。

以上のように、FIT制度の見直しは、再生可能エネルギーの持続可能な導入と国民負担の抑制を両立させるために、様々な施策が検討され、実施されています。